
公務員が病気で休暇をとったり、休職する期間の給料ってどうなるんだろう?
実際に公務員で休職している人の現状も知りたいな。
公務員の病気休暇や休職は年々増加傾向であり、その理由のほとんどがメンタルヘルスの不調です。
「自分は大丈夫」と思っている方でも、メンタルを崩してしまう可能性は十分あります。
そんな時は、心身を整える期間として、「病気休暇」「休職」という制度を活用しましょう。
今回は、公務員の「病気休暇」と「休職」という制度について、実際の法令・条例等を確認しながら解説していきます。
- 公務員の病気休暇と休職の現状
- 公務員の病気休暇の期間と給料
- 公務員の休職の期間と給料

公務員の病気休暇、休職の現状
国家公務員、地方公務員を問わず、精神疾患の公務員は増加しています。
令和2年度に行われた「地方公務員のメンタルヘルス不調による休務者及び対策の状況」をもとに、現状をみていきましょう。
病気休暇・休職者の性別
男性の割合が多い(男性:女性=約6:4)

病気休暇・休職者の役職
係員の割合が多い。

病気休暇・休職者の年代
40代の職員が最も多い。(27.4%)

病気休暇・休職者の所属部署
保健福祉と生活文化の占める割合が多く、企画・政策・防災は少ない傾向がある。

病気休暇・休職に至った主な理由
職場の対人関係(60.7%)

病気休暇・休職後の状況
病気休暇・休職後は復帰が最も多い(55.5%)

公務員の病気休暇と休職の違い(期間と給料)
公務員が病気(精神疾患・うつ病)や怪我で休みを取るには、「病気休暇」と「休職」の2つの制度があります。
公務員の病気休暇と休職制度の大きな違いは、「期間」と「支給される給料の金額」です。
期間 | 給料 |
---|---|
病気休暇(最大90日) | 100%支給 |
休職(~1年) | 80%支給 |
休職(1年~2年半) | 3分の2支給 (共済から傷病手当) |
休職(2年半~3年) | 無給 |
病気休暇は、最大90日まで取得でき、その間の給料は病気休暇前の給料が100%保証されます。
病気休暇の90日で復帰できない場合は、最大3年間取得できる休職を利用することで、最初の1年間は80%、次の1年半は3分の2の給料が保証されています。
3年間は失職することがなく、体調が回復すると職場復帰が可能となります。
公務員の病気休暇とは

この章では、病気休暇について詳しく解説します。
- 病気休暇とは
- 病気休暇の期間
- 病気休暇の取得方法
- 病気休暇期間中の給料・ボーナス
病気休暇とは
公務員が病気等で長期に休む場合、まず特別休暇として「病気休暇」が取得できます。
国家公務員の場合は、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」で以下のように定められています。
一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
第18条【病気休暇】病気休暇は、職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合における休暇とする。
引用元:一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
地方公務員の場合は各地方自治体ごとに条例で定められています。
この病気休暇は有給の特別休暇とされており、公務員の場合、90日間は100%の給与が保証されながら療養に専念することができます。

一般的な中小企業では考えられないほど制度が充実しています。
病気休暇の期間
病気休暇は、病気の治療に必要であると認められれば取得することができ、以下のように規定されています。
人事院規則15-14 病気休暇【第21条】
病気休暇の期間は、療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる必要最小限度の期間とする。(中略)九十日を超えることはできない。
人事院規則15-14
しかし、1週間以上にわたり病気休暇で休む場合には、医師の診断書が必要になってきます。
1週間以降の欠勤はただの病欠扱いになってしまいます。(各自治体の条例を確認してください。)

長期的に病気休暇を取りたい人は、必ず医師の診断を受けましょう。
病気休暇では、勤務していない土日祝日もカウントされる場合がある。
国家公務員の人事員規則では、病気休暇を取得する場合、「勤務しない土日もその日数に含む」という見解になっています。
病気休暇の期間計算に当たって「1日」となる日について
(3)特定病気休暇と特定病気休暇の間に挟まれている「週休日、休日、代休日その他の病気休暇の日以外の勤務しない日」も、負傷又は疾病により休まなければならない状態が継続していると考えられることから、原則として、特定病気休暇を使用した日とみなして、「1日」と計算すること。
引用元:人事院規則「病気休暇の取扱いについて」

確かに…休日を除いてしまうと、4か月くらい休めそうですねよね。
病気休暇の取得方法
有給休暇と同じく事前に申請し、1日または1時間単位で取得できます。
ただし、7日を超える病気休暇を取得する場合は、「医師の証明書」または「その他勤務しない理由を十分に明らかにする書面」の提出が必要となります。
病気休暇中の給与
病気休暇中の給料は手当等(地域手当、住居手当等)も含めて全額支給されます。
通勤手当は、その月に1度でも出勤していれば1か月分支給されます。
ただし、病気休暇等で、その月に1度も出勤しなかった際には、返金が必要となる場合があるので、注意が必要です。
病気休暇中の賞与【ボーナス】
病気休暇中も、賞与(期末手当と勤勉手当)は支給されます。
公務員のボーナスは過去半年の職務を基準に決定されるので、休職して初めてのボーナスの時期から考えて、過去半年に仕事をしているのであれば、その分ボーナスが支給されます。
例えば、ボーナス以前の6か月間のうち3か月出勤していれば、3か月分のボーナスを受け取れますよ。
病気休暇を取得したタイミングによって異なりますので、確認してみましょう。
病気休暇取得中の 賞与については、基準日に病気休暇を取得している場合でも支給されます。
ただし「勤勉手当」について、病気休暇が30日(週休日や休日等を除く)を超える場合には、勤務しなかった全期間が除算の対象となります。
病気休暇がリセットされる場合
病気休暇を取得していた職員が回復して職務に復帰したが、病気が再発して再び病気休暇を取得することとなった場合、復帰した日数によってはクーリング期間制度が適用されます。
人事院規則15-14 病気休暇【第21条第2項】
連続する八日以上の期間連続して使用した特定病気休暇の期間の末日の翌日から、二十日に達する日までの間に、再度の特定病気休暇を使用したときは、当該再度の特定病気休暇の期間と直前の特定病気休暇の期間は連続しているものとみなす。
人事院規則15-14
この制度は、病気休暇を断続的に繰り返して取得するという濫用を防止するためのものです。
具体的には、連続する8日以上の期間の病気休暇を取得した職員が、その病気休暇の期間の末日の翌日から、実勤務日数が20日に達するまでの間(クーリング期間)に、再び病気休暇を取得したときは、前後の病気休暇期間を通算するというものである。
これは、復帰後休みがちな職員についてはしっかりと仕事ができるのか判断するための制度と言えます。

下のアンケートから見てわかるように、一度休職した方は、再度休職する割合は高いですね。
公務員の休職

病気休暇を取得後、90日間では療養期間が十分でない場合、「休職」に移行するケースが多いです。
ここでは、「休職」について詳しく見ていきましょう。
- 休職とは
- 休職の所得方法
- 休職中の給与等について
- 地方共済組合からの手当
- 休職中の賞与
休職とは
公務員の休職は、国家公務員法や地方公務員法に規定されています。
国家公務員法では、以下のように、「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」という表現がされています。
国家公務員法第79条
【本人の意に反する休職の場合】職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
引用元:国家公務員法第79条
各自治体の条例により「休職の期間は、3年を超えない範囲内において休養を要する程度に応じ個々の場合について任命権者が定める。」こととなっています。
休職の所得方法
休職には、主に以下の手続が必要となります。
- 医療機関で「療養が必要」であることの診断書を書いてもらう
- 「休職願」の様式に必要事項を記入し、診断書を添えて人事課へ提出する
- 人事課で承認後、休職に係る発令通知書を受け取る
休職中の給与等について
休職期間は、最長3年となっていますが、休職1年目は給与の80%が支給されます。
休職期間が2年目に入ると無給となりますが、健康保険制度から給与の3分の2の「傷病手当金」が1年6カ月間支給されます。
そして、その後6か月間は、自治体からも共済組合からも給料や傷病手当金の支給がないため、無給の状態となります。
期間 | 給料 |
---|---|
休職(~1年) | 80%支給 |
休職(1年~2年半) | 3分の2支給 (共済から傷病手当) |
休職(2年半~3年) | 無給 |
地方共済組合からの手当
公務員が休職し、1年を超えた場合は、制度上は無給となります。
しかし、地方共済組合からおおよそ3分の2の手当が支給されることになっています。
組合員が公務によらない病気やケガ、出産、育児、介護などで勤務を休み、これにより報酬が支給されないときは、その事由により「傷病手当金・傷病手当金附加金」、「出産手当金」、「育児休業手当金」、「介護休業手当金」または「休業手当金」の休業給付が支給されます。
休職中の賞与
休職期間中であっても賞与がもらえます。(休職して1年間のみ)
ただし期末手当のみで、勤勉手当の支給はありません。
3年間の休職は分限処分により退職の可能性も

国家公務員法第78条2では以下のように規定されており、「休職」は免職処分の前段の猶予措置とも考えられます。
国家公務員法第78条
【本人の意に反する降任及び免職の場合】職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
引用元:国家公務員法第79条

これらの処分は、いわゆる公務員の「分限処分」とされるものです。
分限処分(ぶんげんしょぶん)とは、一般職である日本の公務員で、勤務実績が良くない場合や、心身の故障のために、その職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合など、その職に必要な適格性を欠く場合、職の廃止などにより公務の効率性を保つことを目的として、その職員の意に反して行われる処分のこと。
引用元:ウイキペディア
休職は基本的に制度上3年となっており、3年経過後は分限処分により辞めさせられることになります。
まとめ

万が一、うつ病やケガなどで、仕事ができない状態になってしまったら、すぐに退職するのではなく、「病気休暇」や「休職」制度を利用して、職場復帰のための治療に専念してください。
「病気休暇を取得していいものなのか…」と悩まれる方は多いかと思いますが、実際に取得されている方はたくさんいます。
誰にでも、メンタルの不調、怪我などはあります。
職場復帰に向けて治療する上で、公務員はしっかりとした制度が整っています。
辛いときもすぐに退職を考えるのではなく、まずは一度病気休暇を取得して落ち着いてみてください。